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第450回 いまだにベトナム料理を満喫したことはありません

久しぶりに邱永漢さんの『食指が動く』を手にし
ベトナム料理のことが書かれたエッセイを読みましたが
香港の越南菜館「金牛苑」のことが書かれていて
私がこの店を訪れた時のことを思い出しました。

この店を訪れたのは
今から15年も前の平成3年の夏のことです。
香港がまだ英国の統治下にあり、
6年後には中国に返還されるということで
日本のテレビや新聞が連日、
香港の人たちがカナダやオーストラリアに
向けて“脱出”する光景を伝え、
「いずれ香港はゴーストタウンになる」
と報道していました。

その頃、邱さんは
「香港がゴーストタウンになることはありません。
香港は中国に返還されて、益々繁盛するんです」
と異説を唱え、香港の不動産投資を推奨されました。

私は恐いもの見たさの気持ちも手伝って、
香港の九龍地区に売り物に出ていた
一坪ショップを見ました。
夜には香港の若い人たちが
一杯集まるとのことでしたが見学したのは昼で
人がいなくてガラッとしていました。

さて、その日の夕食をどこにするか思って、
持参していた「邱永漢実務手帳」を繰ると、
ベトナム料理店で味も良く値段も手ごろ
として「金牛苑」が紹介されていました。
そこで、この店に入ったわけです。

ベトナム料理を食べるのは初めてで、
店に入って春巻きなどを注文しましたが
配られた春巻きを食べている間に、
「昼見た一坪ショップを買うか、
それとも買わない方が良いのかな」
というテーマが頭をもたげてきました。

すると、そのことが頭から離れなくなり
そのあと何かを注文したのですが
それがどういうものであったのか、
サッパリ思い出せません。

結局、一坪ショップは買うことになるのですが
私にとっては「金牛苑」では食べている間に
投資のことで頭が一杯になり、
料理のことはすっ飛んでしまい、そのため
いまだにベトナム料理を満喫しないままに
今に至っています。



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執筆者:戸田敦也(2006年11月07日)

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■戸田 敦也 (とだ・あつなり)
toda.jpg 邱永漢思想研究家。経営コンサルタント。問題解決・意思決定の研修講師。昭和18年3月生まれ。昭和40年、東京大学経済学部卒業。同年、八幡製鉄(現新日鉄)入社。平成6年、新日鉄部長を経て、研修業に転じ、現職。以来、邱永漢作品のエッセンス本『原則がわかれば生き残れる』、『アジアの曙』、『生きざまの探求』、『新・メシの食える経済学』(以上、グラフ社)を編集、解説。平成13年『あなたも賢者になれるー私は邱永漢さんの知恵を借りた』(グラフ社)を刊行。邱永漢思想の探求をライフワークとし、その一環として、各地でセミナーを開催。「株式投資の原則」などの通信セミナーも実施。

■戸田敦也さんへのメールはこちらまで: todaatsunari@gmail.com