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第372回 「加工による儲けは大きい」
「付加価値」をわかりやす伝える事例として、
前回は唐津一さんのディーゼルエンジンの話を
紹介しましたが、邱永漢さんは
リコーの創業者、市村清さんから
聞かれた時計の話を
よく引き合いにだされます。
平成6年発刊の『日本人はアジアの蚊帳の外』
からの一節を以下に抜粋させていただきます。
「私は『付加価値』をわかりやすく
説明するために、いつもリコーの創業者、
市村清さんとの問答を引き合いに出している。
市村清さんは私より24歳も年上で、
銀座4丁目に三愛ビルを建てたころが
人気絶頂期であった。
どういうわけだか、私のいうことに
とても耳を傾けてくれたので、
よくリコーの本社に訪ねていった。
あるとき、市村さんは私の顔を見るなり、
自分の腕につけていた時計をはずして
『邱さん、この腕時計はうちの
リコー時計でつくって小売り1万円で
売っている時計ですが、加工する前の
原料はいくらだと思いますか?』
と聞いた。
名古屋の高野精密が
倒産寸前まで追い込まれ、
ときの首相佐藤栄作さんから
再建をたのまれた
いきさつのある会社である。
『で、ほんとうはいくらなんですか』
と私は腕時計をてにとって
しげしげ見つめながら聞きなおした。
『工場の連中に計算させたけれど、
たったの33円だそうでよ。
33円で輸入してきた原材料を加工して
腕時計の完成品にすると、
それが1万円にもなる。
加工による儲けというものは大したものですね』
と市村さんは感慨深そうに言った。」
(『日本人はアジアの蚊帳の外』平成6年)
1万円を33円で割ると、約300倍です。
時計をつくる過程で莫大な付加価値が
生み出されることがわかります。
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執筆者:戸田敦也(2006年08月21日)
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邱永漢思想研究家。経営コンサルタント。問題解決・意思決定の研修講師。昭和18年3月生まれ。昭和40年、東京大学経済学部卒業。同年、八幡製鉄(現新日鉄)入社。平成6年、新日鉄部長を経て、研修業に転じ、現職。以来、邱永漢作品のエッセンス本『原則がわかれば生き残れる』、『アジアの曙』、『生きざまの探求』、『新・メシの食える経済学』(以上、グラフ社)を編集、解説。平成13年『あなたも賢者になれるー私は邱永漢さんの知恵を借りた』(グラフ社)を刊行。邱永漢思想の探求をライフワークとし、その一環として、各地でセミナーを開催。「株式投資の原則」などの通信セミナーも実施。
■戸田敦也さんへのメールはこちらまで: todaatsunari@gmail.com

