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第349回 一株当たり利益の動向が株価の射影
前回、邱永漢さんの20年前の著作
『籠いっぱいの価値ある情報』のなかで
日本でPER(レシオ)が取り上げられた頃の
光景を伝えてくれる文章を
引用させていただきました。
この本で邱さんはファナックと清水建設を例にとって
「一株当りの利益」、「株価」、「レシオ」の
関係を説明し、投資の実際の場では、
実は「レシオ」も役に立たず
役に立つのは「一株あたりの利益」であると
次のように書いておられます。
「株価収益率を根拠にして株価が安いか、
高いかを判断するのは、
今日ではもはや常識に属する。
それはまた日本のように、
いくら利益をあげても会社が配当をケチる
日本の株式市場の株価を
判断する恰好の物差しになっている。
『四季報』でも『会社情報』でも最近は
PER(レシオ)を載せるようになった。
(中略)
例えばファナックは59年に
一株あたりの利益232円ほどの利益をあげている。
株価が高く買い上げられるのは当然として、
17,000円の高値をつけている。
レシオは56倍になる。
また清水建設は59年、
一株あたり19円70銭の利益をあげている。
株価は230円だから、
レシオはわずかに11.6倍に過ぎない。
(中略)
(ふつう)年に8円くらい稼いで株価が160円とすれば
レシオは20倍になる。
すると、(レシオが)一番低いのは清水建設で、
一番高いのはファナックだから、ファナックは
異常な高値まで買い上げられており、
高すぎるのではないかと考える人もいる。
反対に清水はうんと安いし、しかも年に9円の
安定配当をしているから、利回りを計算しても
4%近くにまわる。
ならば、清水を買えばいいのではないかと考える。
少なくとも利回り本位の人やレシオの信奉者は
そう考えがちである。
ところが、利回りはもう全く問題にならないとしても、
レシオも実はあまり参考にならない。
参考になったのは、
一株あたり現にどのくらいの利益をあげているのか、
またこの利益は来年度はどうなるのか
3年後はどうなるのかといった未来の見通しであって、
もし先行きに対して強気の見通しが立つなら、
レシオを無視して株価はさらに上まで買い上げられる。
今や株価の高低を判断する基準はレシオでもなければ、
まして利回りでもないことがわかる。
それでもなお株価の上昇が期待されているのは
一株あたりの利益がもっと上昇するのかどうか、
その企業としてもっと多くのお金を集められる位置に
あるかどうかという一点に集中している。
日本の人気銘柄にはそうした期待が寄せられているか、
このことは配当率がふえるかどうかということとは
全然関係がない。
これからももっと利益をあげて
日本中、世界のお金を集めることができれば、
その企業の含み資産は
いよいよふくれあがる。その斜影が株価であるから、
斜影が大きくなれば株価も自然にあがる
仕掛けになっているのである。」
(『籠いっぱいの価値ある情報』昭和60年)
昨今、邱さんが今後の中国株の動きを
予測するに当たって力説されていることの
理解を深めるのに参考になると考え、
少し長いですが、引用させていただきました。
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執筆者:戸田敦也(2006年07月29日)
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邱永漢思想研究家。経営コンサルタント。問題解決・意思決定の研修講師。昭和18年3月生まれ。昭和40年、東京大学経済学部卒業。同年、八幡製鉄(現新日鉄)入社。平成6年、新日鉄部長を経て、研修業に転じ、現職。以来、邱永漢作品のエッセンス本『原則がわかれば生き残れる』、『アジアの曙』、『生きざまの探求』、『新・メシの食える経済学』(以上、グラフ社)を編集、解説。平成13年『あなたも賢者になれるー私は邱永漢さんの知恵を借りた』(グラフ社)を刊行。邱永漢思想の探求をライフワークとし、その一環として、各地でセミナーを開催。「株式投資の原則」などの通信セミナーも実施。
■戸田敦也さんへのメールはこちらまで: todaatsunari@gmail.com

