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第297回「火と水をくぐることで、より強くなるのが株」

邱永漢さんの『株が本命』(昭和63年)をひらくと
『「利食い千人力」より「持続万人力」』という章が
目の中に飛び込んできます。

この章の中で邱さんは
次のようにお書きになっています。
今から約20年前、バブルが崩壊した状況のなかで
お書きになっていることを頭に入れてお読み下さい。

「今後もよく稼ぐ見込みのある業種であれば
『利食い千人力』の諺は無視して、
長期持続をした方がいいのではないか。

途中でうまく立ちまわったつもりでも、
10年たち、20年たってみると、ダウ平均は
何倍にもなっている。

私が香港から東京へ舞い戻った昭和29年には
ダウは千円をめぐる攻防戦を展開中であった。
それが今では大暴落のあととはいえ、
2万2千円台を維持しているのだから、
ザッと計算しても22倍になている。
全銘柄の中には大して値上がりしなかったものもあるから、
良く値上がりした銘柄は50倍にも100倍にもなっている。

上場企業の中で誰が最も儲かったといえば、
株価の上がった会社の大株主であろう。
創業者のまだ健全な会社ならオーナー社長が
一番の金持ちである。

これらのオーナー経営者がなぜ
大金持ちになったかというと、
持ち株を売らずに何回も暴落の波をくぐらせて
耐え抜いてきたからである。

とすれば、うまく売り抜ければ
「利食い千人力」だろうが、
じっと辛抱して大暴落をくぐり抜けてきた人は
「持続万人力」とでもいいたらよいのではなかろうか。
その意味では、うまく売り抜けられなかったからといて
地団駄を踏んで悔しがることはない。
何回となく、火と水の中をくぐらせば、
もっと強くなるのが株なのである。」(『株が本命』)

「株が上がったら売り抜けよう」
というのは、誰もが本能として持っている
投資法だと思いますが、本能によらない
投資法もあるのだということを知ることは、
とかく固定化しがちな頭をもみほぐしてくれる
効用があると思います。



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執筆者:戸田敦也(2006年06月07日)

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■戸田 敦也 (とだ・あつなり)
toda.jpg 邱永漢思想研究家。経営コンサルタント。問題解決・意思決定の研修講師。昭和18年3月生まれ。昭和40年、東京大学経済学部卒業。同年、八幡製鉄(現新日鉄)入社。平成6年、新日鉄部長を経て、研修業に転じ、現職。以来、邱永漢作品のエッセンス本『原則がわかれば生き残れる』、『アジアの曙』、『生きざまの探求』、『新・メシの食える経済学』(以上、グラフ社)を編集、解説。平成13年『あなたも賢者になれるー私は邱永漢さんの知恵を借りた』(グラフ社)を刊行。邱永漢思想の探求をライフワークとし、その一環として、各地でセミナーを開催。「株式投資の原則」などの通信セミナーも実施。

■戸田敦也さんへのメールはこちらまで: todaatsunari@gmail.com