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第269回「人民元切り上げを迫ったのは外貨準備の増加」

前回、昨年7月中国はアメリカをはじめ、
対中貿易が赤字になっている諸外国からの
強い要請に応じて中国は人民元を
切り上げたと書きました。

実際、人民元の前にアメリカの要人は
ことあるごとに人民元の切り上げを迫っており、
他方、中国は自国の通貨をどうするかは
自分たち自身の判断で決めると、
簡単には外国の要請には従わないという
態度をとり続けていました。

そうしたやりとりを見ていると、
人民元の切り上げを迫るアメリカ、
それに対抗する中国という対立の姿が浮かび、
昨年7月の時点で2%の切り上げを実行したのは
結局中国が外国からの要請に応じた
という解釈が自然に浮かんできます。

でも、邱永漢さんは
「人民元切り上げに圧力をかけているのは
アメリカなどの外国ではありません。
外国がしかけているように見えますが、
人民元の切り上げに圧力をかけているのは
アメリカなどの外国ではなくて、
本当は大へんな勢いでふえ続けている
中国の外貨準備高です」
と解説されます。

どうして中国の外貨準備高が増え続けていることが
人民元の切り上げに圧力をかけるのでしょうか。

「外貨準備がふえ続けているということは
それに見合う人民元の発行を
強いられていることですから、
国内が人民元の大洪水になってしまいます。

インフレや利息の切り上げも
避けられなくなってしまいます。
ですから言を左右にして
切り上げを引き延ばしてきましたが、
逃げ場がなくなって小出しにやったのです」
と邱さんは解説されます。

自国通貨の大洪水がインフレや
利息の切り上げを促すというのは
かつて日本において起こったことですね。

中国としては日本で起こったような
極端な事態は避けたいところでしょうから、
ふえ続ける外貨準備高への対応という
国内事情から踏み込んだのだという解釈は
中国の当事者の苦悩を浮き彫りにしてくれ
なかなか斬新で興味深いです。



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執筆者:戸田敦也(2006年05月10日)

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■戸田 敦也 (とだ・あつなり)
toda.jpg 邱永漢思想研究家。経営コンサルタント。問題解決・意思決定の研修講師。昭和18年3月生まれ。昭和40年、東京大学経済学部卒業。同年、八幡製鉄(現新日鉄)入社。平成6年、新日鉄部長を経て、研修業に転じ、現職。以来、邱永漢作品のエッセンス本『原則がわかれば生き残れる』、『アジアの曙』、『生きざまの探求』、『新・メシの食える経済学』(以上、グラフ社)を編集、解説。平成13年『あなたも賢者になれるー私は邱永漢さんの知恵を借りた』(グラフ社)を刊行。邱永漢思想の探求をライフワークとし、その一環として、各地でセミナーを開催。「株式投資の原則」などの通信セミナーも実施。

■戸田敦也さんへのメールはこちらまで: todaatsunari@gmail.com