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第189回 変化への柔軟な反応が大切です

はじめて株を買うときは
右も左もわかりません。
ですから先輩の人の意見を参考に、
銘柄を選ぶことになります。

私の場合がそうでした。
たまたま会社の図書館に入って
雑誌をパラパラめくっていたら、
是川銀三さんと邱永漢さんが対談し、
これからは新日鉄の株がいいと
おっしゃっていました。

是川銀三さんと邱永漢さんがといえば、
ともに自分が心の底から思っている
ことしか言わない人です。
この2人がともに1つの会社を推奨している
ということは注目に値すると思いました。

当時、私はその新日鉄につとめ
当時、不況で鉄冷えの街と言われた
八幡製鉄所に膨大な遊休地の開発に
頭を痛めていて、そんな会社の将来を
明るく展望することはできませんでした。

ただ、是川さんと邱さんはともに
私にとっては畏敬の対象で、その2人が
一致して新日鉄株という1つの株を推奨し、
私も以前から株を買ってみたいと思おり
新日鉄の株価は300円程度で
買いやすかったこともあり、
私は新日株を買いました。

その後、株価が少し上がったところで、
すぐ売り、次は半導体の時代と考え、
NEC株に乗り換えました。
私には鉄鋼界は斜陽化しているという
観念が頭から離れなかったのです。

鉄鋼業が斜陽化業種であるという認識は
是川さんや邱さんも同じでしたが、お2人は
鉄鋼会社が設備を削減し、いま生産能力を
大きく下げているが、たまたま世界中で
鉄の需要が起こっているので、鉄の価格があがり、
鉄鋼会社が久しぶりに業績をあげるので、
買いとおっしゃっていたのです。

その後、どうなったかと言いますと
新日鉄株は900円まであがりましたので、
是川さんや邱さんの予想が的中したことになります。

一方、私も、鉄鋼業界に明るい材料が出ていることは
知らないではなかったのですが、何しろ、斜陽化している
という見方にとらわれ、新しい動きに目を向けなかったので
その後の上昇を予測できず、チャンスを失しました。

的確に先を読むには、1つに観念にしばられず、
あたらしく起こっている変化に目を向け、
柔軟に対応することが大切です。

邱さんは、その後、このときのことを、
ある本で「君子、豹変せざれば株で儲からず」
とお書きになりました。



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執筆者:戸田敦也(2006年02月19日)

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■戸田 敦也 (とだ・あつなり)
toda.jpg 邱永漢思想研究家。経営コンサルタント。問題解決・意思決定の研修講師。昭和18年3月生まれ。昭和40年、東京大学経済学部卒業。同年、八幡製鉄(現新日鉄)入社。平成6年、新日鉄部長を経て、研修業に転じ、現職。以来、邱永漢作品のエッセンス本『原則がわかれば生き残れる』、『アジアの曙』、『生きざまの探求』、『新・メシの食える経済学』(以上、グラフ社)を編集、解説。平成13年『あなたも賢者になれるー私は邱永漢さんの知恵を借りた』(グラフ社)を刊行。邱永漢思想の探求をライフワークとし、その一環として、各地でセミナーを開催。「株式投資の原則」などの通信セミナーも実施。

■戸田敦也さんへのメールはこちらまで: todaatsunari@gmail.com