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第128回 「見切りは損を小さくする秘訣」

「見切り千両」で思い出しました。
大阪で活動している私の友人は
今から5年ばかり前に、邱永漢さんの文章に出会い
すっかりファンになりました。
そしてあるとき図書館で、
『新説 二宮尊徳』を借りだして読み、
“貯金十両、儲け百両、見切り千両、無欲万両”
という言葉にであい、この言葉がまた気に入って
3年前に「ハイQ」で次のような質問をしました。

「今は自分は“貯金十両”のレベルで、
“無欲万両”のレベルにはなれないまでも、
見切り千両“のレベルには到達したいと思って
日々勉強しています。そこで貯金ばかりしていても、
次のレベルへは進めないと思い、中国株を始めました。
ついては株を見切りをする時は
どういうことに主眼を置おかれるのでしょうか?
お教えください。」

この質問に対して、邱さんは概略、
次のようにお答えになりました。
「質問をいただいて、『新説 二宮尊徳』で
私が『貯金十両 儲け百両 見切り千両 無欲万両』
というフレーズを入れたことを思い出しました。

ある時、私が田中角栄さんに
その文句を書き込んだら、
『そうだ、そうだ、この通りだ』といって、
角栄さんは何回も頷いていました。

この中で何が一番難しいかというと、
最後の方に行くほど難しくなります。
貯蓄をするのはお金を使わなければできることです。
しかし、儲けようということになると倹約しただけではだめで、
もっとずっと知恵を働かさなければなりません。

見切るということになると
うんと痛い思いをすることですから、
それに耐えられるだけの
決断と勇気が必要になります。

それ以上に難しいのが欲を捨てることです。
儲けようと損しようと、人のためになること、
世の中のためになること、
もしくは自分のためになることであっても
欲をかかないでちゃんとやれるようになれば、
人間として完成に近づきます。

たとえば株をやるときに自分がそれをいくらで買ったか
ということをどうしても気にします。
自分が買った時より安いと、
どうしても売る気になりません。
しかし株をいくらで買ったかに関わりなく
いま売るか、買うかということになったら、
別の考え方をするでしょう。

だから、もとはいくらであったかに
とらわれるのは間違いだということになります。
過去にとらわれず、思い切って
見切ることはとても難しいことですが
商売をやる人にとっては損を少なくするヒケツなのです。
先ずお金を貯める初歩からはじまって、
少しずつ高等技術を身につけるのがいいと思います。」(「第106回」)

友人によれば図書館で借り出した、『新説 二宮尊徳』は
ぼろぼろだったとんことですが、本に書かれた邱さんの言葉は
永遠の命を持っていますね。
こういうのを「金科玉条の言葉」というのでしょうね。


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執筆者:戸田敦也(2005年12月20日)

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■戸田 敦也 (とだ・あつなり)
toda.jpg 邱永漢思想研究家。経営コンサルタント。問題解決・意思決定の研修講師。昭和18年3月生まれ。昭和40年、東京大学経済学部卒業。同年、八幡製鉄(現新日鉄)入社。平成6年、新日鉄部長を経て、研修業に転じ、現職。以来、邱永漢作品のエッセンス本『原則がわかれば生き残れる』、『アジアの曙』、『生きざまの探求』、『新・メシの食える経済学』(以上、グラフ社)を編集、解説。平成13年『あなたも賢者になれるー私は邱永漢さんの知恵を借りた』(グラフ社)を刊行。邱永漢思想の探求をライフワークとし、その一環として、各地でセミナーを開催。「株式投資の原則」などの通信セミナーも実施。

■戸田敦也さんへのメールはこちらまで: todaatsunari@gmail.com