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第76回 「会社拝見 ⑤」 ~千代田化工建設株式会社~ その1

石油化学ブームの推進力 ~千代田化工建設株式会社~
「”あなたの工場を造らせていただきます”
という会社は数ある日本の企業であまり聞いたことがない。
しかし、千代田化工はプラント建設専門の有望会社だ。
つまり、日本産業の大工で、株は大鵬なみの勢い。」

「1."ウェルカム"と微笑で出迎え
   羽田の飛行場から自動車にのって荻原製作所の前を通り、
   広い道にでてくると、英文で、
   Welcome CHIYODA Chemical Plant Maker
   と書いたネオンが輝いている。
   さらに自動車が京浜国道にぶつかるところにまた同じ会社の、
   もっと大きなネオンが光っている。

   これが昭和二十三年一月、資本金百万円、従業員二十数名で始まり、
   現在、資本金六億円、従業員千五百名を擁する
   千代田化工建設株式会社の
   外人客に対するウエルカム・ツー・トウキョーの看板である。

   このごろは、「朝日新聞」に一頁広告を出したり、ラジオ東京の
   「南繁の安全メモ」のスポンサーを買って出たりで、
   だいぶ、多くの人に知られるようになったが、
   それにしても最終消費製品とはまったく何の関係もない化学プラント・
   メーカーがどうして、カメラ屋やトランジスタ屋なみの広告を
   しているのであろうか。


2.技術のベスト・セラー
   この疑問に対する解答はきわめて簡単である。
   それは千代田化工建設が、最初からアメリカのコバースやケロッグや、
   あるいは西独のルルギのような著名化工建設会社と比肩する
   技術開発会社を目指しているからである。

   産業や製品には国境があるかも知れないが、
   技術の世界には国境がない。
   すぐれた技術は最初から世界を市場とすべきものである。

   この観点にたてば、たとえ、千代田化工のお客が現在のところ
   ほとんど国内産業だけだとしても、これらのお客は世界をかけめぐって
   新しい技術をとり入れようと血眼になっている人々であることに
   変わりはなく、その利用する乗物も飛行機なら、
   その物の考えかたもジェット機なみのスピードである。

   知る人ぞ知るで、あの広告を見て、
   「へえ、白人の独壇場だとばかり思っていたが、
   黄色人種にも化学プラントのような複雑な設計をする才能があるのか」
   と、驚嘆する外人もいるのである。

   千代田化工の社長玉置明善さんは、つい最近、
   化学機械視察団団長として、ヨーロッパ視察の旅から帰ったばかりだが、
   その際持参した「アウトライン・オブ・チヨダ」という英文の会社案内に、
   大いにヨーロッパにおける同業者たちの日本に対する認識を
   新たにさせたそうだ。
   それほど千代田化工建設は、日本の産業界で異彩を放つ、
   たった一軒の、技術を売る会社なのである。


3.技術が全体の六十%
   このことを何よりも端的に物語るのは、千代田化工の人員構成であろう。
   現在、千代田化工は従業員が約千五百名だが、そのうち、
   技術者が八百名を占めている。
   技術者不足は現在日本の恒常的現象であるが、
   その中にあって、巧妙なスカウト戦を展開して
   一年に百五十名からの技術者を大量に展開し、
   現に技術者六十%の構成比率を維持している会社は、
   他にまったく類例がないのではあるまいか。

   どうしてこれだけの技術陣を整えるようになったかは、
   むろん玉置社長の力に負うところが大きいが、しかし、その前に
   どうしてこれだけの技術陣を必要とするか、ということに
   まずふれるべきであろう。


4.まず設計から始めよ
   千代田化工建設の事業内容は一口で言えば、
   どこかの会社で工場を建てようとする場合に、工場設備の設計から
   建設までを全部請負って、一つの工場をそっくり建ててやる商売である。
   なかには図面だけ引いてもらいたいというのもあれば、
   機械や化学装置の部分だけをやってもらいたいという注文もあるが、
   そのどれ一つをとっても、他の部分との関連が深いから、
   総合的な配慮が必要であり、
   千代田の技術陣は土木、建設から機械、化学、電気など、
   すべての分野まで包含しなければならなくなる。

   千代田の設計室に行けばわかることであるが、
   ここの技術陣はいろんな部門の人が集まって、
   朝から晩まで口角泡をとばしての大議論、なにしろ世界の技術水準に
   遅れをとるわけには行かないし、いや、むしろその水準を抜く優秀かつ
   低廉なる設備をつくらなければならないので、鉄板を折りまげたり、
   タンクをつくったりするよりも、最初の図面が大切なのである。
   ちょうど小説家がペンを走らせるよりも構想を練ることに、
   精力と時間の大部分を奪われるようなものであろう。
   だから、かりに現場で五十人の者が動員されているとすれば、設
   計室に五百人の者が動員されることになる。
   普通の機械屋や建築屋と比率がまったく逆になっているのである。

   こうした技術陣の養成はもとより一朝一夕に出来るものではない。
   現社長玉置さんが戦後、この会社の技術長として
   会社の創業に参加して以来、
   一貫して力を注いだのは技術人材の養成ということであり、
   昨今のように技術者争奪戦が激しい時代でも、
   他社のやならいような新手で次々と、新卒業生を集めている。」


今回から「会社拝見」の紹介も5社目に入っていきます。
「千代田化工建設株式会社」は、日本では数少ないプラント建設の企業です。
日本の企業にも、分野によって強い所と弱い所があります。
薬や化学製品は、ドイツやアメリカといった欧米に、
まだ一日の長があるようです。
それは日本より一足先に利益を拡大していった欧米企業が、研究開発費に
潤沢に投資していったからだと考えます。
飛行機もそうです。
部品点数の多いジェット機やロケットは弱い分野であったと思います。
今は、技術力も格段にアップしておりますが。

そういった中にあって、飛行機でも日本企業の存在価値が注目されている記事が
5/15の日経新聞に掲載されていました。
それは、抜粋ですが、
「三菱重工業は十四日、来年就航する米ボーイングの次期中型旅客機
「787」の主翼を初出荷した。
ボーイングが旅客機の要である主翼の開発・生産を外部に委ねるのは初めて。
三菱重工が受注する決め手になったのは、
炭素繊維と樹脂を混ぜた複合材を使った機体の製造実績。
三菱重工はかって戦闘機「F2」で複合材製の主翼を作った。
ボーイングは機体の最終組み立て以外は外部企業に委託する方針。」
要するに、日本の技術力に舌を巻いたということだと思います。

他にも、ボーイングや欧州エアバスの部品加工に
日本の工作機械が使われているのですから、今や、製品作りを支える機械や
なくてはならない部品の供給先は日本製だといっても過言ではないと思います、
3月に戸田ゼミでいったベトナムの日系企業の工場では、
半導体製作用の工作機械が、ずらりと並んでいましたが、
ほとんど日本製だと言っていました。
アメリカ製は一台もなく、ドイツ製が金属メッキ用として数台使っているそうです、
因みに6/1の日経新聞によると、2006年の工作機械生産で各国のシェアは、
日本27.4%、ドイツ17.3%、中国11.9%、その他として、
韓国、アメリカ、台湾、イタリア、スイスの順でした。

さて、話を千代田化工建設株式会社に戻します。
技術者が全体の60%を占める企業のようで、製品作りの出発点である
設計・図面作成に総力を上げていることがわかりました。
一番難しい所であり、一番おいしい所に精力を注ぐ所に、この企業の腕の見せ所が
あるようです。
工場設備の設計からはじまって、工場を造るまでの総合エンジニアリングの企業を
次回も紹介を続けます。



1954年生れ。52歳。
九州の高校を卒業して
すぐ某建設機械メーカーに入社。
それ以降、現在に至る。
サラリーマン生活のかたわら投資活動を実施。
貧乏旅行を好む。

■虹原太助へのメールはこちらまで → nizihara2000@yahoo.co.jp

執筆者:虹原太助(2007年06月05日)